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シンポジウム

公開シンポジウム

「海が結ぶ日本と世界−渋沢敬三と日本常⺠文化研究所−」

趣旨

 コロナ禍はいみじくも地球規模で人間存在の有り方をさまざまな方面で再考する機会をわれわれにもたらした。現代社会は情報機器の発達により人々の日常生活の出来事が瞬時に地域を超えて伝わるだけでなく、人の移動もグローバル化し、コロナ世界感染の主要因ともなった。今後、「コロナ禍以前・以後」は人々の社会認識に大きな影響を及ぼすことになる、その中で民俗学の方向性はどうあるべきであろうか?

 維新以来、横浜の地は日本を代表する海外への窓口となってきた。クルーズ船来航に始まるこの度のコロナ禍への対応は、黒船来航による攘夷から開国へ、渋沢栄一の生涯を描く現在放映中の大河ドラマ『青天を衝け』の主題にも重なる。その意を継ぐ栄一の孫、渋沢敬三も早くから海、海外から見た日本を意識し、設立したアチック・ミューゼアムの調査・研究活動の一つの眼目にした。経済人でもあった渋沢敬三は二つのミンゾク(民俗・民族)学を多方面から支援し、その同人とともに海民や民具を主な対象とし、絵引きや写真・映像による非文字資料の可視化、博物館建設を通しての学問の公開化など、先達の柳田国男、折口信夫とは別の角度から庶民、常民の学としての民俗学樹立を志向した。その後身の日本常民文化研究所は本年で 100 周年を迎える。

 いずれにしろ、ヒト・モノ・情報が地域を超え、また瞬時に行き交う今日の国際化、情報化社会において、「郷土研究」に始発した日本民俗学も一国民俗学から柳田国男が念願した「世界民俗学」への視野の拡大が求められる。21 世紀の民俗学は地域に暮す住民同士が、まず自身の「郷土」を知り、国や民族を超え、生活レベルで互いに理解し、孤立ではなく共感、連帯する意識を 持つことが前提となる。「世界常民学」の可能性をともに考えてみたい。

日時

2021 年 10 月 9 日(土) 13:00~16:00

会場

Zoomによるオンライン開催(終了しました)

パネリスト等

総合司会 山本志乃(神奈川大学)

パネリスト
安室 知(神奈川大学) 「渋沢敬三の自然観 ― 魚名研究とその学史的意義 ―」
藤川美代子(南山大学) 「海に生きる女性 ― 船上生活者と海女 ―」
飯田 卓(国立⺠族学博物館) 「海を越えて続く鉄路 ― 現代に生きる渋沢敬三のフィールドワーク観 ―」
加藤幸治(武蔵野美術大学) 「自民俗誌の可能性 ― 農漁民の覚醒 ―」 

趣旨説明 佐野賢治(神奈川大学名誉教授)「郷土研究から世界常民学へ」 

コメンテーター
松田睦彦(国立歴史⺠俗博物館)
後藤 明(南山大学)

総合討論司会
山本志乃(神奈川大学)
丸山泰明(神奈川大学)

動画

動画の公開は10月19日(火)をもって終了しました。

プレシンポジウム(日本⺠俗学会第 915 回談話会)

「海が結ぶ日本と世界−横浜から考える越境と接触の⺠俗−」

趣旨

 横浜が 1859 年に開港してから、162 年経つ。半農半漁村の横浜が、外国への窓口である国際港湾都市として多くの人が集まって都市コミュニティを形成してきた。ここに住むのは、異質で多様な人びとである。
 横浜には、⻄洋商人に付随して来た中国人が横浜新田の埋め立て地に移り住み、中華街を形成した。華僑・華人は外国人として住みながら、日本人と共同生活を送り、日本人とつながりを持 って生活してきた。華僑・華人は、彼らの墓地である中華義荘に地蔵堂を建て、さらに日本の⺠俗である水子供養を取り入れた。
 横浜の京浜工業地帯に隣接した鶴見区に、沖縄出身者が多く住んでいる。そこには、沖縄鶴見県人会館があり、そこを中心に新年会や運動会、エイサーなどが行われている。その地域にある小学校を会場に、沖縄角力大会が行われてきた。大相撲とは異なる取り組みで行われる沖縄角力大会が戦前から行われ、現在では中国のモンゴル⺠族や南米からの移⺠が参加する。
 横浜港から移⺠船で多くの日本人がブラジルに移⺠した。サンパウロの一角に、多くのアジア人が居住して東洋人街を形成した。そこには、多くの日本料理屋、日系ホテルや日本仏教寺院さらに仏具店も存在する。そこで行われる移⺠による「花祭り」や「七夕祭り」など、日本の⺠俗が海を越えて新たな⺠俗として創造される。
 現代の⺠俗は、人びとの移動とともに地域を越境し、国を越境して異なる人びととの文化接触を繰り返しながら⺠俗を生み出していく。横浜から現代における⺠俗の多様性を多角的に見ていく。

日時

2021 年 9 月 12 日(日)13:30 〜 17:00

会場

神奈川大学みなとみらいキャンオンライン開催(日本民俗学会ホームページの第915回談話会をご覧ください)

パネリスト等

趣旨説明 小熊 誠(神奈川大学)

報告
郭立東(東京大学人文社会系研究科) 「横浜華僑婦女組織と水子地蔵像の造立をめぐって」
小熊 誠(神奈川大学) 「移住するという事−横浜で行われる沖縄角力−」
根川幸男(国際日本文化研究センター)「越境する都市祭礼―ブラジル・サンパウロ東洋街という時空から−」(仮)

コメンテーター 阿南透(江戸川大学)ほか

今後の日程

  • 2021-08-09(月)
    広告募集期限
  • 2021-08-16(月)
    研究発表登録票・発表要旨提出期限
  • 2021-08-27(金)
    参加費等納入期限
  • 2021-08-27(金)
    書籍販売申込期限
  • 2021-09-下旬
    第3回サーキュラー発送予定
    ※参加等申し込みの⽅のみ